『エルニーニョ現象』と『ラニーニャ現象』

 『エルニーニョ現象』や『ラニーニャ現象』という言葉を耳にされたことはありませんか。
 これらの現象は、風や海流、地球の自転などの影響を受け、海面水温に変化が起こるとされている現象です。
 二つの現象は、日本から遠く離れた地域で起こる現象ですが、日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。

 平常時の状態は、太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられています。西部のインドネシア近海では海面下数百メートルまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上っています。このため、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなっています。海面水温の高い太平洋西部では、海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発生します。

【エルニーニョ現象】

 南米ペルー沖(太平洋赤道域の東部)の海域は冷水海域ですが、数年に一度赤道方面から暖かい海水が流れ込むことによって、海面水温が平年より高い状態が1年程度続く現象をいいます。

 エルニーニョ現象が発生している時には、東風が平常時よりも弱くなり、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まっています。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなっています。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります。

 日本への影響としては、夏季に太平洋高気圧が北に張り出しにくく、気温が低く、日照時間が少なくなる傾向にあります。【冷夏】西日本の日本海側では降水量が多くなる傾向があります。また、【暖冬】冬季では西高東低の冬型の気圧配置が弱まり、気温が高くなる傾向にあります。

【ラニーニャ現象】

 エルニーニョ現象の逆で、東太平洋赤道付近の海面水温が平年より低い状態が長期間続く現象をいいます。

 ラニーニャ現象が発生している時には、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなります。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなっています。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生します。

 日本への影響としては、【暑夏】夏季に太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向にあります。【寒冬】冬季では西高東低の冬型の気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向にあります。